王宮や帝廟など歴史ある建造物群が世界遺産に登録されているベトナムの都市「フエ(Hue)」はベトナム最後の王朝「グエン王朝」の都として栄えたという歴史があります。
グエン王朝の王城としてフエに置かれた「フエ王宮(Imperial Enclosure)」はグエン王朝を象徴する建物の一つであり、世界遺産に登録されているフエの人気観光スポットでもあります。
今回は、グエン王朝とフエ王宮の魅力や歴史などを詳しく解説。それぞれへの理解を深めて、フエ王宮観光をより満喫してみてはいかがでしょうか。
目次
ベトナム最後の王朝・グエン王朝を詳しく解説
現在のベトナムには国王はいません。ですが、過去には様々な王朝が打ち立てられ、中でもグエン王朝は統治域・統治期間ともに長く、またベトナムの最後の王朝としても知られています。今回はグエン王朝を中心に、フエ王宮や宮廷料理について詳しくご紹介します。
グエン王朝とは?成り立ちから滅亡までの歴史
約150年にわたってベトナムを統治したグエン王朝には様々なドラマがありました。王朝が成立するまでと、滅亡するまでの歴史を解説します。
グエン王朝の皇帝はベトナム中部の有力勢力の出身
阮(グエン)王朝の初代皇帝の嘉隆(ザーロン)帝は、15世紀から18世紀にかけて存在した王朝・後黎朝時代の有力な地方勢力である阮氏の出身です。後黎朝が実権を失っていた18世紀には複数の勢力による争いが続き、阮福暎(後のザーロン帝)以外の阮氏はほとんど滅ぼされ、阮福暎は現在のタイにあたるシャムへ亡命するに至りました。
グエン王朝が成立するまで
1787年、阮氏はシャム王やフランス人キリスト教宣教師らの支援を受け、対立勢力を打倒。1802年に阮福暎は阮(グエン)王朝の初代皇帝・嘉隆(ザーロン)帝として即位し、都を富春(フエ)に定めました。
フエは紀元前1世紀から重要な都市として開発されていたとされていますが、グエン王朝の都に選定されたことから、さらに発展していくことになります。
形式上は清の属国扱いだった
グエン王朝はベトナムを支配していたものの、形式上は清の属国扱いだったため、清に「南越」という国号を名乗ることを求めましたが、清から与えられたのは「越南」という国号。
- 「南越」の意味…南に越の国がある。この国は大きく、南の天下を支配している
- 「越南」の意味…中国の南方の僻地に越がある。さらにその南方にある国である
清はグエン王朝を警戒し、属国であることを強調するような国号を与え、グエン王朝もそれに逆らえなかったことが分かります。
フランスの保護国となるまで
建国にあたりフランス人キリスト教宣教師の支援を受けたこともあり、当初はフランス人を厚遇していたものの、次第にフランスとの関係は悪化していきました。
1858年にフランス・スペイン連合軍がベトナムに侵攻し、西貢(サイゴン。現在のホーチミン市)など南部の都市が陥落。フランスと講和条約を結びましたが、その後も衝突は続き、1883年についにフランスの保護国となり、フランスがベトナムを実質統治することになりました。
グエン王朝の滅亡
1937年から始まった日中戦争では、ヨーロッパ連合軍が中国の軍人・蔣介石を支援するための軍事輸送路(援蔣ルート)を遮断するために、日本軍がグエン王朝支配域をふくむフランス領インドシナに進駐。その後まもなく日本の敗戦とベトナム八月革命により、ベトナム民主共和国が成立して、グエン王朝第13代目皇帝・保大(バオダイ)帝は退位し、王朝は終焉を迎えました。
グエン王朝の魅力!中国やヨーロッパの文化を取り入れ、独自の文化を生み出した
グエン王朝の魅力は、中国文化とヨーロッパ文化をベトナム文化と見事に調和させた点にあります。特にフエではそうした建築物が世界遺産に多く登録されています。
東南アジアでは珍しく、中国文化の影響を強く受けた国
全13代の皇帝を輩出し、約150年にわたってベトナムを統治したグエン王朝は、現在のベトナムとほぼ同じ領土を支配した初めての統一王朝です。
東南アジアの国の言語はインド文化の影響を受けていることが多いですが、ベトナムは中国の漢字文化に強い影響を受けています。1919年にフランス総督府がラテン文字による表記を推進するまでは、文字は漢字で書かれていました。グエン王朝の皇帝の書いた文書なども漢字で書かれたものが残っています。
中国文化以外にもヨーロッパの文化を取り入れたグエン王朝
また、王朝の成り立ちと地理的立場から、中国文化やフランスなどの文化を積極的に取り入れ、ベトナム文化と見事に融合させました。
その素晴らしい独自の文化が見られる陵墓などの建築物などが現在でも残っていて、世界遺産に指定されているフエ王宮でもフエ独特の文化の名残を楽しむことができます。
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世界遺産のフエ王宮
グエン王朝の都の王城だった「フエ王宮(Imperial Enclosure)」は、世界遺産にも指定されているフエ屈指の見どころの一つです。フエ王宮の魅力はその歴史だけでなく、中国やヨーロッパなどの文化を取り入れた点にもあります。
中国文化をふんだんに取り入れた王宮
グエン王朝成立以前から文字を漢字で書くなど中国文化の影響を受けていましたが、王宮の建設にも中国の影響が見て取れます。
中国の紫禁城を模したフエ王宮
フエ王宮のある旧市街を囲む城壁は、フランス帰りの建築家、黎文学(レ・ヴァン・ホク)の設計によるものです。城壁内部のフエ王宮は中国の紫禁城を模したと言われていて、王宮内の建物など、あちこちに中国文化の影響を感じることができます。
歴代皇帝を祭る9つの鼎(かなえ)
王宮内にはグエン王朝の菩提寺である世祖廟(テートー廟 / The To Temple)の前部にあたる顕臨閣(ヒエン・ラム・カック / Hien Lam Pavilion)があります。
そこには皇帝の権力の象徴として置かれた青銅器の鼎(かなえ)が9つ。鼎は一つの重さが約2.5トンもあり、「高・仁・章・英・毅・純・宣・裕・玄」と、テートー廟に祀られている皇帝の諡号を表す漢字と、ベトナムの景色や動植物のモチーフが描かれています。*注
鼎に描かれているものはそれぞれ異なっていて、違いを楽しむのはもちろん、中国文化とベトナム文化が混ざりあった面白さがありますので、じっくり見てみると意外な発見があるかもしれませんね。
*注釈…5代目と6代目の皇帝はすぐに廃位され、11代目と13代目の皇帝は生前に退位したため、諡号はありません。
フエ王宮の見どころ
フエ王宮内は広く、移動用に電気カーが用意されているほどです。どれも貴重なものばかりですが、中でもおすすめの見どころをご紹介します。
1.王宮門(Ngo Mon Gate)
「王宮門」は午門とも呼ばれ、中国の紫禁城の午門を模したと言われています。名前の由来は、正午になると太陽が門の真上に来るよう設計されたことからとも。
2.太和殿(Thai Hoa Palace)(再修復中、2025年完成見込み)
「太和殿(タイホア殿 )」は王宮の正殿。皇帝の即位式など重要な儀式が行われていた、王宮の中心的施設です。紫禁城にも太和殿という正殿があり、紫禁城をとても意識して造られたことがうかがえます。太和殿の屋根・柱などには皇帝の象徴である龍の装飾が施されています。
3.朱色の回廊
「朱色の回廊」は、かつては皇帝の政務室の勤政殿や、寝所の乾成殿などと繋がっていましたが、フランス軍の攻撃でそれらの建物は失われ、美しい回廊だけが残っています。鮮やかな朱色で統一された回廊は王宮内でも一番人気のスポットです。
4.閲是堂(Royal Theatre)
閲是堂(ロイヤル・シアター)では、宮廷宮廷雅楽のニャーニャックと宮廷舞踊のショーを見ることができます。ニャーニャックはユネスコの世界無形遺産に登録されていて、聞くことができる数少ない場所の一つがこの閲是堂です。
ニャーニャックはグエン王朝の滅亡とベトナム戦争により、一時は消滅寸前とまで言われましたが、聖徳大学の教授らの尽力により、復活しました。
かつては皇族のみに許された娯楽ともされたニャーニャックを楽しんでみてはいかがでしょうか。
5.延寿宮(Dien Tho Palace)
「延寿宮」は初代皇帝・ザーロン帝の時代に皇太后の住まいとして建てられました。
延寿宮の敷地内にある静明楼は13代目のバオダイ帝時代に造られたコロニアル様式のフランス風の建物です。純フランス風ではなくベトナム文化も見受けられ、グエン王朝が様々な文化を取り入れていたことが分かる建物の一つです。
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グエン朝の都として発展したフエの宮廷料理
観光の楽しみの一つでもあるのが各土地の郷土料理。グエン王朝の都として栄えたフエでは宮廷料理が発達しました。当時はもちろん庶民が口にすることはできませんでしたが、今では宮廷料理を楽しめるレストランがいくつもあります。
フエの王宮料理メニューと、王宮料理が食べられるレストランをご紹介します。
味も見た目も楽しめる宮廷料理
宮廷料理には実に多種多様なメニューがありますが、中でも人気のものをご紹介!
1.チャー・フオン(Chả Phượng)
肉や魚の練り物をパイ生地で包み焼きにしたパテとにんじんで鳳凰を象った料理です。お好みでヌクマムというタレをつけて食べてください。
2.ブン・ボー・フエ(Bún Bò Huế)
米粉の麺と牛肉でできた、フエの定番料理。屋台でも食べられる庶民料理ですが、実は宮廷料理と庶民の食べる料理はメニューの違いではなく、材料の質や見た目の違いによるところが大きく、宮廷料理のレストランではより洗練された味のブン・ボー・フエを楽しめるでしょう。
3.コム・セン(Cơm Sen)
お米と蓮の実をチャーハン風に炒めた後、蓮の葉で包んで蒸した料理です。最後に蓮の花を飾るところもあり、蓮の味と見た目の華やかさが魅力。
4.バイン・ラー・チャー・トム(Bánh Lá Chả Tôm)
米粉とエビをバナナの葉で包んで蒸したバイン・ラーと、エビのすり身蒸しのチャー・トムを組み合わせた料理です。元は別々の料理とされていますが、一緒に食べるとおいしいことから、二つセットにして出されることが多いです。
5.バイン・ベオ(Bánh bèo)
小皿サイズに蒸した米粉とタピオカ粉の生地の上に、エビそぼろや豚皮などのトッピングを乗せたものです。万能ダレのヌクチャムと一緒にめしあがれ。こちらもフエを代表する名物料理です。
宮廷料理が食べられるおすすめレストラン4選
フエの王宮周辺で宮廷料理が食べられるおすすめのレストランをご紹介します。本格派の料理が食べられるお店、アジアンな内装も楽しめるお店、王族の雰囲気を味わえるお店などそれぞれ特徴があるので、複数のお店で食べ比べするのも楽しそうですね。
1.ホアン・フー・レストラン・フエ(Hoàng Phú Restaurant Huế)
王宮から徒歩約30分、タクシーで約10分。店内にはランタンが灯り、落ち着いた雰囲気の口コミで人気のお店です。王宮からは少し距離があるので、タクシーを利用するといいでしょう。周辺にはホテルが多いので、近くのホテルをとるのもおすすめです。
基本情報
名前 | Hoàng Phú Restaurant Huế |
---|---|
住所 | 05 Nguyen Thai Hoc street, Phu Hoi, Hue City, Thua Thien Hue |
電話番号 | 0234 3696 666 |
メールアドレス | hoangphu.restaurant@gmail.com |
営業時間 | 7:00 - 22:00 |
ウェブサイト | https://hoangphurestaurant.com/ |
2.イータオ・ガーデン(Vườn Ý Thảo)
王宮から徒歩約25分、タクシーで約10分。店内の内装と凝った見た目の料理が人気のお店です。手ごろな価格で宮廷料理を楽しみたい方にはおすすめです。
基本情報
名前 | Vườn Ý Thảo |
---|---|
住所 | 03 Thach Han Street, Thuan Hoa, Hue City, Thua Thien Hue |
電話番号 | 0234 3523 018 |
メールアドレス | ythaogarden@gmail.com |
営業時間 | 11:00 - 21:00 |
ウェブサイト | https://www.facebook.com/YThaoGroup/?locale=vi_VN |
3.ティン・ジア・ビエン・レストラン(Tịnh Gia Viên Restaurant)
王宮から徒歩約15分、タクシーで約10分。庭のある開放的なつくりのレストランです。価格も手頃で、この店独自のオリジナリティのある見た目の宮廷料理も楽しめます。
基本情報
名前 | Tịnh Gia Viên Restaurant |
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住所 | K7 28 Le Thanh Ton, Phu Hau, Hue City, Thua Thien Hue |
電話番号 | 077 441 0001 |
メールアドレス | tonnuthiha@gmail.com |
営業時間 | 11:00 - 21:00 |
ウェブサイト | https://www.tinhgiavien.com.vn/ |
4.エンシェント・フエ(Nhà hàng Ancient Huế)
王宮から徒歩約30分、タクシーで約5分。皇帝や妃の衣装を着て、王族気分で宮廷料理を楽しめるユニークなお店です。店内の内装も豪華で、料理も味と見た目にこだわった本格派宮廷料理レストラン。
フエでは他にも宮廷料理を食べられるレストランがたくさん。街歩きをしながら宮廷料理を楽しめるのもフエの魅力です。
基本情報
Nhà hàng Ancient Huế
名前 | Nhà hàng Ancient Huế |
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住所 | 104/47 Kim Long, Hue City, Thua Thien Hue, Vietnam |
電話番号 | 0234 3590 356 |
メールアドレス | sales@ancienthue.com.vn |
営業時間 | 11:00 - 21:00 |
ウェブサイト | https://ancienthue.com.vn/ |
王宮や宮廷料理など、グエン王朝の名残を楽しめるフエ
今回はグエン王朝の歴史やフエ王宮の見どころ、周辺のおすすめレストランをご紹介しました。グエン王朝とつながりの深いフエは、現在でもその名残を随所で楽しむことができます。
グエン王朝についてのちょっとした知識があれば、フエ王宮の見え方もすこし違って見え、より観光を満喫できますよ。そして、食でも宮廷料理を堪能すれば、フエ滞在がとても充実したものになることでしょう。
ベトナムの中でもフエ独自の魅力や楽しみ方がたくさんあるフエを訪れてみてはいかがでしょうか。
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