
バインミー屋台だと思って近寄ったら、まさかのバー!?ダナンの街角で、そんなギャップに出会えるのが「United Bar」です。奥へ進むと広がるのは、異国情緒たっぷりのおしゃれな空間。
今回はこの不思議なバーを手がけた日本人オーナーに、オープンのきっかけや、こだわりのメニュー、他のバーとの違いについて話を聞きました。
目次
バインミー屋の奥に現れる“異世界”バー
ローカルなパブが並ぶ通りの一角に、ふと目を引く小さなバインミー屋があります。屋台のような外観に人の気配はなく、どこか妙な静けさすら感じる佇まい。近づいてよく見ると、鉄の取っ手がひとつ。その扉を開けた瞬間、まったく別の世界が広がります。
薄暗い照明に包まれた空間、重厚感のあるヴィンテージ家具、センス良く流れる音楽。そこはまさに“異世界”と呼ぶにふさわしい、隠れ家スタイルのバーです。
このバーの名は「United Bar」。日本人オーナーでありDJでもあるKAZHOさんが手がけた、音と空間が融合する特別な場所です。2022年にスピークイージースタイルへとリニューアルして以来、その“バインミー屋の奥にバー”というユニークな入口がSNSやテレビでも話題を集め、一躍ダナンの注目スポットとなりました。
観光客はもちろん、地元の若者や海外のトラベラーもこぞって訪れる理由は、この“ギャップ”にあります。ベトナムの屋台文化の中に、こんな仕掛けが隠れているとは 。誰もがその驚きと高揚感を体験しにやってきます。
ここでしか味わえない魅力
観光地ダナンの中心にありながら、一歩足を踏み入れると、まるで異世界に迷い込んだかのような空間が広がる「United Bar」。 内装や音楽、ドリンク、そして人との距離感に至るまで、すべてにKAZHOさんのこだわりが詰まっています。ここでは、その魅力を3つの視点からご紹介します。
異世界感と音の心地よさ
バーの空間づくりは、「スピークイージー」をコンセプトにしています。アメリカの禁酒法時代に存在した、看板のない隠れ家バーをイメージしたもので、店の入口からすでにその世界観が始まっています。入り口は、ベトナムでよく見かけるバインミー屋台を模したカモフラージュ。観光客の目にも自然に映るデザインで、まさかこの奥にバーがあるとは誰も思いません。何も知らずに通り過ぎてしまいそうな外観だからこそ、そのギャップが来店者に強い印象を残します。
扉を開けて中に入ると、そこはまったく別の空間。照明は控えめで、アンティーク調の家具や装飾がレトロな雰囲気を演出しています。海外のバー文化に触れながらも、どこか親しみやすさを感じさせる設計は、初めて訪れた人でも自然とリラックスできる空気を生み出しています。
店内で流れる音楽は、オーナーのKAZHOさんが実際にDJとしてプレイ・録音したミックス音源です。自らが選曲し、空間に合わせて仕上げたサウンドは、既製のBGMでは味わえない一体感を生み出しています。
ローカル文化をユーモアたっぷりに取り入れつつ、国際的な感性で丁寧に設計された空間。それが、バーの内装と音楽の魅力です。
人とつながる接客スタイル
同店の接客スタイルは、どこまでも“人とのつながり”を大切にしています。カクテルの味そのものよりも、バーテンダーとの会話や居心地のよさを何よりも重視しているのが特徴です。
現在のお客さんは、海外からの観光客が中心で、特にヨーロッパからの旅行者が多く訪れています。来店のスタイルとしては、グループで来る旅行客が3〜4人ほど、一方でひとりでふらっと訪れるのは在住外国人が多く、ベトナム人を含むローカルの方も見かけます。
特に一人で来られるお客さんにとって、バーテンダーとの距離が近いことは安心感につながります。スタッフがフレンドリーに話しかけてくれることで、初めてでも肩の力を抜いて過ごせるのです。
接客においては「お客さんの満足感が一番大切」というのがオーナーKAZHOさんの考え。スタッフ全員にもその思いが共有されていて、技術よりもまず“人としての接し方”を重視した接客を徹底しています。「ユナイテッド=つながる」という名前の通り、バーテンダーとお客さん、お客さん同士の間に自然な会話や笑顔が生まれる場所。それが、このバーならではの魅力です。
遊び心たっぷりご当地カクテル
同店のドリンクメニューには、ベトナムのローカルフードや食文化をテーマにしたユニークなカクテルが多数そろっており、特にそうした“ご当地系”カクテルが人気です。
たとえば、パクチーやピーナッツの香りを取り入れた「バインミー風カクテル」や、コムガム(ベトナム風おこわ)をモチーフにしたライス系カクテルなど、一見「それ、飲み物にするの!?」と思うような組み合わせを、見事なバランスで仕上げています。味の再現度も高く、ベトナムの“あの味”が意外にもカクテルとして楽しめるという発見があるのも魅力です。こうした一杯一杯に遊び心が込められていて、思わず次のメニューも試したくなります。
また、アルコールの有無に関わらず楽しめるように、同店ではノンアルコールドリンクも豊富に用意されています。クラフトソーダやアジアンテイストのモクテルなど、幅広い好みに対応したメニュー構成になっており、お酒が苦手な方でも安心して楽しめます。価格帯も良心的で、誰でも気軽にオーダーできる一杯に出会えるのが、同店ならではの魅力です。
オーナーが語る、ダナンでバーを開いた理由
今回は、同店のオーナー・KAZHOさんに直接お話を伺い、このバーをダナンに構えた理由や、店名に込めた想いについて詳しく伺いました。そのひとつひとつの言葉からは、土地や人への深い愛情、そして“つながり”を大切にする哲学が伝わってきます。
ダナンに決めた運命の出会い
同店を構える場所として、KAZHOさんがダナンを選んだのには、はっきりとした理由があります。初めてこの街を訪れたのは、大学時代に参加したDJツアーのとき。いくつかの都市を巡るなかで偶然立ち寄ったのがダナンでした。
そのとき感じたのは、海がすぐそばにある開放的な環境、どこか素朴で穏やかな街の空気、そして何より、人々の優しさやあたたかさでした。特別裕福な街ではないけれど、そこに暮らす人たちはみんな幸せそうに見えて、それがとても印象的だったといいます。大学卒業後、新しいことに挑戦したいという思いもあり、「あのとき惹かれた街で一歩を踏み出そう」と、ダナンへの移住を決意したそうです。
結果として、同店の空気感は、この街の雰囲気そのものに深く影響を受けています。どこか肩の力が抜けていて、だけど居心地がいい。そんな場所を、ダナンという街で形にしたのが、今のユナイテッドバーです。
“United”は原点
「United Bar」という店名には、KAZHOさんの過去の経験と思いが込められています。由来は、かつて日本でDJとして活動していた頃に所属していた音楽チームの名前に「United」という言葉が含まれていたこと。そのチームでは、仲間とのつながりや一体感を大切にしており、KAZHOさんにとっては今も心に残る大切な原点だといいます。
自分の店を持つなら、その精神を引き継ぎたい 。そうした想いから、先輩に相談して名前の使用を了承してもらい、「United Bar」と名づけました。
“United”には「つながる」「団結する」といった意味があります。お客さん同士やスタッフとのやり取りの中で、人と人との距離が自然と縮まるような、あたたかい空間をつくりたい。そんなKAZHOさんの願いが、この店名に込められています。
誰もが楽しめるバーを目指して
同店は、お酒が好きな人だけでなく、アルコールが苦手な人や飲まない人にとっても居心地の良い空間を目指しています。その背景には、店主のKAZHOさん自身がアルコールをまったく飲めない体質であるという事実があります。
そのため、同店ではノンアルコールのドリンクも豊富に用意されており、モクテルやクラフトソーダなど、見た目や味の完成度が高いメニューが揃っています。アルコールを飲まなくても、バーの雰囲気やドリンクをしっかりと楽しめるよう工夫されています。
また、価格帯も手頃に設定されており、高額なボトル注文などを求めるようなシステムもありません。気軽に1杯だけ注文して過ごすことができ、観光の合間や、ひとりでのんびりしたいときにも立ち寄りやすいのが特徴です。
United Barで、ダナンの夜をもっと楽しもう
夕暮れが過ぎ、街にゆっくりと夜の気配が広がりはじめる頃、路地裏のバインミー屋に小さな灯りがともります。扉を開けると、賑やかな通りとはまるで別世界。抑えた照明に包まれた空間で、ほどよい音楽が流れ、どこか時間の流れまでゆるやかに感じられます。
ここは、予定を立てて訪れるというより、旅の途中でふと思い立って立ち寄りたくなるような場所です。誰かと語らう夜も、一人で静かに過ごす夜も、どちらも受け入れてくれる懐の深さがあります。ドリンクの種類も豊富で、お酒が苦手な人でも気兼ねなく楽しめるのもうれしいポイント。観光スポットでは味わえない、でも確かにこの街の魅力が詰まった夜の過ごし方。ユナイテッドバーは、そんな心あたたまるひとときを届けてくれます。
この“隠れ家”で過ごす夜が、旅の思い出を少しだけ深く、やさしく彩ってくれるはずです。ふと足を止めたくなったら、ぜひ立ち寄ってみてください。
基本情報
名前 | United Bar |
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住所 | 02 Nguyễn Chí Thanh, Thạch Thang, Hải Châu, Đà Nẵng 550000 |
電話番号 | 0935142534 |
営業時間 | 18:30-01:00 |