【ダナン】アオザイショー「Áo Dài Show」|ベトナムの歴史と文化を60分でさかのぼる旅

活気あふれる海辺の街・ダナンのなかに、静かに息づく一つの芸術空間があります。そこでは、一本一本のアオザイの裾、ひと振りの舞、ひとつの旋律を通して、ベトナムの伝統文化が生き生きと蘇ります。

それが「Áo Dài Show(アオザイ・ショー)」です。このショーは、約300年にわたるアオザイの歴史と、その背景にあるベトナムの文化・社会の歩みを、一本の物語として構成した大規模な伝統芸術公演です。

ダナンで楽しむ「Áo Dài Show」とは

「Áo Dài Show」は、ベトナムの民族衣装であるアオザイの約300年の歴史を、音楽・ダンス・ファッション・舞台演出などを組み合わせた総合芸術として語り直すショーです。約60分の公演のなかで観客は、阮朝の宮廷、素朴な田舎の市場、伝統的な結婚式、女子学生の白いアオザイ、そして現代アオザイのコレクションへと、時代と空間を旅していきます。

アオザイは単なる衣装ではなく「ベトナムの文化そのもの」、そのことを視覚的にも感情的にも深く感じられる構成になっています。ショーは毎日17時及び19時45分から、ダナン市五行山区にある「五行山文化会館(Nhà Văn Hóa Ngũ Hành Sơn)」(住所:1A Trần Văn Đán, Đà Nẵng)で上演されています。

会場は約400〜500席の収容が可能で、広いステージと現代的な音響・照明設備を備えています。両サイドには2台の大型LEDスクリーンが設置され、各シーンに合わせた映像が映し出されるほか、英語・韓国語・中国語の字幕も表示されます(今後、日本語字幕の導入も予定されています)。

ダナンで「ベトナム文化の深み」を体験したい方にとって、非常に印象的な文化コンテンツと言えるでしょう。

創設者 ― 演出家・起業家 グエン・ラン・ヴィー

「Áo Dài Show」を生み出し、演出を手がけているのは、起業家であり、舞台演出家でもある Nguyễn Lan Vy(グエン・ラン・ヴィー)氏です。彼女はアオザイのふるさととも言われる古都フエに生まれ育ち、その後、海外で学業と仕事の経験を積んだのち、「文化観光」という新しいスタイルのツーリズムを提案してきました。

「ベトナムの魂に火を灯し続ける(Giữ lửa cho hồn Việt)」という想いのもと、Lan Vy 氏と彼女が率いるVKSTAR社は、「Áo Dài Show」をフエとダナンの両都市で上演される象徴的な文化コンテンツへと育て上げてきました。約10年にわたり、世界各国から訪れる観光客を魅了し続けています。

また彼女は、フエ・フェスティバルをはじめとした大規模な文化イベントや、各地のアオザイ・フェスティバル、ダナンでの芸術公演など、多くのステージ作品の総合演出も務めてきました。そこに共通するテーマは、「アオザイを通して、ベトナムという国と人の美しさを表現すること」です。

アオザイへの強い愛情と、「アオザイを文化の親善大使にしたい」というビジョンから、Lan Vy 氏はアオザイを舞台芸術と観光の中心に据えたプロジェクトを展開してきました。「Áo Dài Show」は、単なるエンターテインメントではなく、ベトナム文化を世界に発信するためのライフワークとも言える存在なのです。

舞台芸術で紡ぐ、ベトナムの歴史物語

ショーの冒頭では、まずベトナムの歴代王朝の歴史が紹介されます。建国から護国に至るまでの歩みが、MCのナレーションと映像、重厚な照明とともに語られ、観客は自然と「時間旅行」の入口へと引き込まれていきます。

1. 「Âm Sắc Hoàng Cung」― 阮朝宮廷の世界

オープニングを飾るのは、阮朝宮廷の華やかな世界を描いた「Âm Sắc Hoàng Cung(宮廷の音色)」です。アオザイの形が現在のように洗練されていったとされる阮朝時代を背景に、王や王妃、王族、文武百官の装いがステージいっぱいに広がります。

温かみのある黄金色の照明のなか、モデル兼ダンサーたちは錦織の豪華な衣装をまとい、宮廷舞踊を披露します。

  • 扇を使った宮廷舞
  • 宮中の宴で酒を献じる儀式をモチーフにした舞
  • チャウヴァン(巫女歌「Hát chầu văn」)と茶碗舞(Múa chén)を組み合わせた演目

など、古の宮廷文化を象徴するパフォーマンスが、現代的な舞台表現と融合して展開されます。荘厳さと優雅さが共存するこのシーンは、特に外国人旅行者の印象に強く残るパートです。現代的なショーにはない、ベトナムならではの宮廷美学を間近に感じることができます。

2. 300年アオザイ五身衣 ― 田舎の市場風景

宮廷の世界から一転、舞台は「田舎の市場(Chợ Quê)」をテーマにしたシーンへと移ります。ここは、ショーのなかでも特に温かく、ノスタルジックな空気が流れるパートです。

素朴な市場でのやりとり、行き交う人々の笑顔、昔ながらの屋台や品物…。そのなかで、18世紀末〜20世紀初頭の人々の暮らしに溶け込んだ「アオザイ五身衣(Áo Dài Ngũ Thân)」が登場します。

華美ではないけれど、どこか凛とした気品を感じさせる装い。日常生活のなかで息づくアオザイの姿は、宮廷衣装とはまた違う魅力を放ちます。

単なる衣装ショーではなく、「昔のベトナム人の暮らしそのもの」を感じられる文化的なシーンです。

3. ベトナムの伝統的な結婚式

観客からの人気が高いシーンのひとつが、「ベトナムの伝統的な結婚式」を再現したパートです。ここでは、Nhật Bình(ニャットビン)や五身衣アオザイが、花嫁・花婿、両家の家族の礼服として登場し、儀式の流れが丁寧に描かれます。

婚礼行列、贈り物の受け渡し、祝福の言葉、舞と音楽…。一つひとつの所作や振り付けから、ベトナムの家族観や結婚に込められた祈り、礼節が自然と伝わってきます。

「アオザイは、大切な節目の日を彩る衣装でもある」という事実を、改めて実感できる場面です。

4. 蓮の舞(Múa Sen)

ベトナムの国花・蓮をモチーフにした「蓮の舞」は、ショーのなかでもひときわ詩的なシーンです。軽やかな衣装に身を包んだダンサーたちが、静かな音楽のなかで優雅に舞う姿は、まるで静かな池に咲く蓮の花が風に揺れているかのようです。

気品と清らかさ、そしてどこか儚さを含んだこの舞は、観る人の心をゆっくりと鎮めてくれます。

5. 女子学生のアオザイ

純白のアオザイといえば、多くのベトナム人が思い浮かべるのは女子学生の姿です。このシーンでは、古都フエにある名門女子校「Đồng Khánh(ドンカイン)」で愛されてきた白いアオザイ姿が、繊細な演出のもとで再現されます。

真っ白なアオザイを纏った女子学生たちが、少し恥ずかしそうに、でもどこか誇らしげに歩き、舞い、笑う姿は、観る人に学生時代の淡い記憶を呼び起こします。外国人観客にとっても、「これがベトナムの青春の象徴なのか」と感じられる、印象に残るシーンです。

6. 「Áo Dài Show」― 現代アオザイコレクション

ショーの締めくくりは、ベトナムの著名なアオザイデザイナーたちによるコレクションのランウェイです。伝統的なシルエットを守ったものから、現代的なアレンジを加えたデザインまで、さまざまなスタイルのアオザイが次々と登場し、アオザイが今も進化し続けていることを感じさせてくれます。

特に印象的なのが、「国旗とアオザイ」を組み合わせた演出です。その日の観客の国籍リストをもとに、あらかじめ各国の国旗をモチーフにしたアオザイが用意され、ステージ上のLEDスクリーンにも対応する国旗が映し出されます。

自分の国の国旗が表示され、その柄を取り入れたアオザイがステージを歩く瞬間、観客は「自分の国が歓迎され、尊重されている」という温かい気持ちを強く感じます。とても感動的で、忘れがたいハイライトです。

実際に観てみた感想

実際に公演を観てみると、「Áo Dài Show」はダナンで体験できる文化ショーのなかでも、特に完成度が高く、心に響く作品だと感じました。視覚的な華やかさだけでなく、運営の丁寧さ、観客との距離感、会場全体の空気づくりまで含めて、「よく練られた文化観光コンテンツ」という印象です。

会場に到着すると、まず観客一人ひとりに無料のドリンクが提供されます。ビール、ペットボトルのお茶、炭酸飲料などから1本選ぶことができ、開演前のひとときをリラックスして過ごせます。

ドリンクを飲みながらステージや照明、会場の雰囲気を眺めていると、自然と「これから始まる物語」の世界に心の準備が整っていきます。ロビーやホールの雰囲気も、活気はありつつも整然としており、雑然とした印象はありません。

約60分の公演中、観客はただ座っているだけではありません。さまざまな形で「体験し、参加する」時間が用意されています。

  • 宮廷の酒を味わう体験
    一部のシーンでは、演者が客席に降りてきて宮廷で振る舞われていた酒を模した「ホアン・クン(皇宮)のお酒」を勧めてくれます。
    儀式の一部を体験するような感覚ですが、飲めない人は丁寧に断ることもでき、無理に飲ませるような雰囲気は一切ありません。
  • 伝統菓子・ココナッツケーキ
    観客にはココナッツを使った伝統菓子も配られます。
    ただ観るだけでなく、「味覚」を通しても少しベトナムの伝統に触れられる仕掛けで、あたかも祭礼や宴に招かれているような感覚になります。
  • 茶碗舞(Múa chén)の体験
    特に印象に残ったのが茶碗を使った舞の体験です。
    ダンサーたちはステージだけで踊るのではなく、客席の列を一人ひとり巡りながら、茶碗の持ち方や動かし方を丁寧に教えてくれます。
    初めてでも、ゆっくりとした指導と見本のおかげで自然と動きが揃い、観客側も「自分もショーの一部になった」ような感覚を味わえます。
  • 若い歌手たちとの交流
    歌とダンス、アオザイのランウェイが組み合わさったシーンでは、歌手たちが観客に呼びかけ、手拍子や合いの手を誘います。
    希望者はステージに上がって一緒に踊ることもでき、その場の空気が一気に華やぎますが、それでも品の良さは失われず、「楽しいけれど下品ではない」絶妙なバランスが保たれています。

出演しているダンサー、モデル、歌手の多くは、芸術大学や専門学校に通う学生たちです。プロとしての基礎訓練を受けているため技術もしっかりしており、若々しい表情とエネルギーにあふれています。

「仕事だからやっている」のではなく、本当に舞台を楽しみ、心を込めて表現していることが伝わってくるので、その熱量が客席にもどんどん広がっていきます。

舞台装置や照明もよく計算されており、まぶしすぎたり、色がごちゃごちゃして見づらいということはありません。各シーンの雰囲気に合わせて、光の色や明るさが繊細に変化し、物語世界への没入感を高めてくれます。

両側の大型LEDスクリーンには、その場面に合った背景映像や映像演出が映し出され、英語・韓国語・中国語の字幕も表示されます。将来的に日本語字幕が追加されれば、日本人旅行者にとってさらに参加しやすくなると感じました。

公演終了後も、楽しみは続きます。観客はステージ近くまで行き、出演者やモデルたちと自由に写真撮影ができます。

そのすぐそばにはアオザイのレンタル&販売コーナーもあり、サイズ別に整然と並べられています。伝統的な柄から、シンプルで現代的なデザインまでさまざまなアオザイが用意されており、ホイアン観光用にレンタルするのも、旅行の記念として購入するのもおすすめです。そして何より特別なのが、「国旗×アオザイ」の演出です。


公演前にその日の予約リストから観客の国籍を確認し、各国の国旗をモチーフにしたアオザイと、その国旗の映像を準備します。自分の国の国旗がLEDスクリーンに映し出され、その柄を取り入れたアオザイがランウェイを歩く瞬間、
「この場所で、自分の国が歓迎され、尊重されている」と強く感じ、とても誇らしい気持ちになりました。

「また別の友人や家族を連れて来たい」と思わせてくれる、心に残るワンシーンです。旅のプランとしては、たとえば次のような一日もおすすめです。

  • 日中:アオザイをレンタルしてホイアン観光・撮影
  • 夕方〜夜:ダナンへ戻り、19時45分から「Áo Dài Show」を鑑賞
  • 21時頃に終了

一日を通して、街並みと舞台の両方でベトナム文化に浸ることができ、とても満足度の高い過ごし方になるはずです。とくに、ローカル文化や「その国らしさ」を大切にするタイプの旅行者には、ぜひおすすめしたい体験です。

公演の基本情報

  • 上演時間:約60分
  • 公演時間:毎日 17:00 & 19:45
  • チケット料金:1名 500,000 VND
  • 会場:五行山文化会館(Nhà Văn Hóa Ngũ Hành Sơn)
     住所:1A Trần Văn Đán, Phường Khuê Mỹ, Quận Ngũ Hành Sơn, Đà Nẵng
  • 収容人数:約400〜500席
  • おすすめ対象
    • 海外からの観光客
    • 家族旅行・友人グループ
    • 文化体験や伝統芸術が好きな方
    • 午後〜夜にかけてホイアン観光と組み合わせたい方

ダナンで“本物のベトナム文化”に触れたいなら「Áo Dài Show」へ

ダナンに来たら「Áo Dài Show」を外せない理由は、単に「きれいなショーが見られるから」ではありません。

  • アオザイという一つの衣装を通して、ベトナムの歴史と文化を立体的に理解できる
  • 舞台芸術・音楽・照明・食・観客参加型演出が一体となった総合文化体験である
  • ホイアン観光と組み合わせやすい便利なロケーションにある
  • 近代的なホールでありながら、「ベトナムらしさ」がしっかり感じられる世界観がある

「Áo Dài Show」は、単なるショーではなく、目と耳と心で感じる「ベトナム文化の旅」そのものです。ダナンで過ごす一夜を、この特別な60分に託してみてはいかがでしょうか。

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